簿記と仕訳の本質
簿記と仕訳の仕方に関する考察
このページでは簿記と仕訳の仕方(仕訳の基本的な思考法)について解説する。
簿記と仕訳の定義
簿記の定義の仕方には色々とあるが、企業の目的は資本(利益)を増やすことなので、端的に言えば、簿記とは「資本の増減」を記録する仕組みである。
そして、仕訳はその記録をするための技術である。
したがって、資本の増減を記録するための簿記にあっては、会計理論上、その根本的な公式は
資本 = 資産 ー 負債
となる。
つまり、資本は資産から負債を差し引いたものとして定義されるという公式である。
仕訳の仕方
仕訳とバランスシート
簿記はこの資本(資産ー負債)の増減を記録するわけだが、しかし、日々の取引では資本は直接的には増減しない。
なぜならば、資産から負債を差し引いたものとして定義される資本は、会計理論上は決算により最終結果として現れるものであり、日々の取引で直接観察できるものではないからである。
実際、日々の取引でその増減が最初に観察されるのは、資本ではなく、現金、預金、備品、売掛金などの資産や負債である。
資本はこの観察された資産と負債の計算結果(差額)としてしか現れない。
つまり、資本は「直接記録される」ものではなく、「定義(計算)される」ものなのである。
先ほど、簿記の根本的公式を「資本 = 資産 ー 負債」としたが、この公式は
資産 = 負債 + 資本
と書き換えることができる。
つまり、バランスシート(貸借対照表)である。
バランスシートとは、左側(借方)に記載される資金の運用を表す資産、そして、右側(貸方)に記載される資金の調達を表す負債(他人資本)と資本(自己資本。純資産)の3つの部からなる一覧表である。
なお、このうち資本は①株主の出資金(つまり、資本金)と②利益からなる。
資本 = 資本金 + 利益(資本の増加分)※
※利益は貸借対照表上では「利益剰余金」と表示される。
利益は企業の経営活動により生じたものであるが、会計理論上はこのように利益は資本の増加分として資本を構成するものと考える。
以上を図示すると、次のようなものになる。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 資産 | 負債 |
| 資本(資本金+利益) |
仕訳をするにあたっては、まずこのバランスシートを頭の中でイメージする。
簿記で仕訳という技術を使って記録・集計した結果としてのバランスシートの書き方自体にすでに仕訳の2つの本質が表されているからである。
すなわち、原因があって結果がある、つまり、無から有が生じることはないという「取引の二重性」と、何かを得る(減らす)には必ず同等の何かを減らして(増やして)いるという「貸借平均の原則」の2つである。
- 取引の二重性
- 貸借平均の原則
なお、貸借平均の原則は、1つの取引を2つの側面(原因と結果、あるいは自分と他人。借方と貸方)に分けて記入するという取引の二重性の結果として当然に導きだされる原則である。
仕訳での基本的な思考法
以上を前提にしたうえ、仕訳を行う際の思考の過程を分解すれば、次のようなステップを踏むことになる。
- 資産増減の認識
まず、第一に現金・預金などの資産の増減を認識することからスタートする - 資産増減の原因の認識
次に、この資産の増減は①負債や別の資産の増減、または②資本の増減のどちらによるものかを判断する(たとえば、現金が増えたが、それは返済を要するもの=負債か、または、自分のものにして良いもの=資本か)- 貸借対照表取引(交換取引)が原因
資産の増減が負債や別の資産の増減による場合(たとえば、現金が増えたが、それは銀行から借り入れたものであった(負債の増加)、または、現金が増えたが、それは銀行から引き出したものであった(資産の減少)等)
→ 貸借対照表のみで完結する - 損益取引が原因
資産の増減が資産・負債ではなく、資本の増減をもたらす取引による場合(たとえば、現金が減ったが、それは事務用品を購入したためであった等)は、資本の増減自体はまだ認識できないので、その資本の増減理由(=収益または費用)を判断する
→ 収益・費用の認識が必要になり損益計算書も登場する- 収益(売上など)→資本増加
- 費用(経費など)→資本減少
- 貸借対照表取引(交換取引)が原因
以上が仕訳を行う際の思考の基本的な流れである。
このように簿記、仕訳自体の考え方は非常にシンプルな原理に基づいているといえる。
この簿記に「第三者への一定の適正な基準(=会計基準)に基づいた報告」することを本質とする会計的な考え方が深く入り込むことにより、簿記が複雑化する、という関係にある(→ 簿記と会計の違い)。
補足―貸借対照表と損益計算書の関係の歴史
貸借対照表から損益計算書へ
複式簿記は、本来は増加した財産(実在勘定)と減少した財産(実在勘定)を左右に併記する(取引の二重性)ことにより、均衡を保ち(貸借平均の原則)、財産を管理しようというものである(交換取引)。
たとえば、現金で土地を買った場合、増加した財産(土地)と減少した財産(現金)は均衡し、貸借平均の原則が成り立つ。
したがって、特に貸借対照表における均衡性は決定的事実である。
リトルトン 『会計発達史[増補版]』 同文館出版、2002年、43項。
しかし、たとえば、安く仕入れた商品が高く売れた場合には、増加した財産と減少した財産の均衡性が破られ、貸借平均の原則が成り立たなくなる。
そこで、考え出されたのが名目勘定=損益計算書の勘定科目であり、これにより貸借対照表と損益計算書のすべての勘定を通して貸借平均の原則が維持されることになった。
執筆者:ケーソルーション(2006年より本サイト運営)
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