期末商品棚卸高
期末商品棚卸高とは
期末商品棚卸高の定義・意味など
期末商品棚卸高(きまつしょうひんたなおろしだか)とは、商品売買取引の記帳方法として三分法を採用している場合に、実務上、決算整理仕訳で仕入または売上原価勘定の代わりに、当期に売れ残った在庫商品の仕入原価の合計額(つまり、期末商品棚卸高)を処理する費用勘定をいう。
他の勘定科目との関係
期末棚卸高
期末棚卸高は期末商品棚卸高と期末製品棚卸高等の総称であるが、期末商品棚卸高の代わりに一般的な勘定科目である期末棚卸高勘定を使用する場合もある。
参考:岩崎恵利子 『パッと引いて仕訳がわかる 逆引き勘定科目事典』 シーアンドアール研究所、2009年、137項など。
繰越商品・仕入または売上原価
商品売買取引の記帳方法として三分法を採用する場合、簿記のテキストのセオリーでは、繰越商品と仕入または売上原価勘定を用いて決算整理仕訳をして売上原価の算定を行う。
しかし、この仕訳では仕訳時の勘定科目名と貸借対照表や損益計算書での表示が一致しなくなるので、実務上は(具体的には税理士事務所などでは)、貸借対照表や損益計算書での表示と統一させるため、代わりに商品・期首商品棚卸高(期首棚卸高)・期末商品棚卸高(期末棚卸高)勘定を用いて処理することが多い。
期末商品棚卸高の目的・役割・意義など
売上原価の算定
簿記は、最終的には会計として利害関係者に企業の財政状態と経営成績を報告することを目的とする。
この目的は貸借対照表や損益計算書などの決算書(財務諸表)といった報告書を作成・公開することで果たされる。
このうち損益計算書は、企業や個人事業主の1会計期間(事業年度)における利益(いくら儲かったのか)を明らかにするために作成するものである。
そして、損益計算書における利益は、次の計算式で算定・算出される(利益計算)。
利益 = 収益 - 費用
この利益計算における費用は次の2つからなる。
- 売上原価
- 経費
利益には、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つの段階がある(→段階利益)が、このうち、当期の粗利である売上総利益は収益=売上高から費用の一要素である売上原価を控除して得られる。
売上原価は、厳密には販売した商品の単価(1個あたりの仕入原価)に販売した数量を掛けて計算するが、この計算は非常に煩雑である(→分記法)。
そこで、売上原価の計算は、決算時に在庫商品を繰越商品勘定などを用いて処理したうえ、期末における仕入勘定の残高(つまり、当期に仕入れた商品の仕入原価の合計額)である当期商品仕入高(いわば、仮の費用)をベースにして、これを売上原価(いわば、確定した費用)に一括して変換して行うのが一般的である(→三分法)。
すなわち、当期商品仕入高のなかには、前期の仕入金額ではあるが当期の費用とすべきもの (前期に仕入れた商品が当期で販売された場合。つまり、前期から繰り越された在庫商品)や、逆に当期の費用とはすべきではないもの(当期に仕入れた商品が売れ残った場合。つまり、当期に売れ残った在庫商品※)が含まれている場合がある。
※当期に売れ残った在庫商品については、売上原価として当期の費用に計上することはできない。
そこで、収益から差し引かれる費用はその収益と何らかの対応関係があるものに限定されるという費用収益対応の原則から、決算時に決算整理事項のひとつとして、当期商品仕入高を次の計算式により売上原価として正しく算定しなおす。
なお、費用と収益の対応関係には①個別対応と②期間対応があるが、売上高と売上原価の対応関係は、個別対応であり、仕入れた商品のうち、売れた分だけを売上原価とし、売れ残った分は売上原価としない。
前期末に商品の在庫がなく、かつ、当期に仕入れた商品がすべて販売された場合には、当期商品仕入高=売上原価となる。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
企業会計原則
売上原価は、…、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、製造工業の場合には、期首製品たな卸高に当期製品製造原価を加え、これから期末製品たな卸高を控除する形式で表示する。
この計算式により、当期に仕入れた商品の仕入原価の合計額を表していた仕入勘定の残高は、売上高(収益)に対応する商品の仕入原価=売上原価(費用)を表すものとなる。
企業会計原則
売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価であって、…
さらに、上記の計算式により売上原価を計算するにあたっては、次の2つの方法がある。
- 仕入勘定を用いて売上原価を計算する方法
- 売上原価勘定を用いて売上原価を計算する方法
ただし、いずれの方法を採用するにせよ、期首商品棚卸高(前期から繰り越された在庫商品)や期末商品棚卸高(当期に売れ残った在庫商品)は具体的なかたちがあるモノなので、前払費用勘定などで費用処理をするのではなく、繰越商品勘定などの資産勘定で処理をする。
しかし、前述したように、以上の決算整理仕訳を、実務上は、商品・期首商品棚卸高(期首棚卸高)・期末商品棚卸高(期末棚卸高)勘定の3つの勘定科目を用いて処理する。
期末商品棚卸高の決算等における位置づけ等
期末商品棚卸高の財務諸表における区分表示と表示科目
期末商品棚卸高は、損益計算書の売上原価の内訳科目である。
損益計算書 > 経常損益の部 > 営業損益の部 > 売上原価
期末商品棚卸高の表示方法
企業会計原則では、三分法による記帳方法を前提として、損益計算書の売上原価の項目に、期首商品棚卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品棚卸高を控除する形式で表示することとしている。
企業会計原則
売上原価は、…、商業の場合には、期首商品たな卸高に当期商品仕入高を加え、これから期末商品たな卸高を控除する形式で表示し、…
また、財務諸表等規則でも、損益計算書の売上原価の内訳として、期首商品棚卸高、期末商品棚卸高、当期商品仕入高を区分掲記することとしている。
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
(売上原価の表示方法)
第七十五条 売上原価に属する項目は、第一号及び第二号の項目を示す名称を付した科目並びにこれらの科目に対する控除科目としての第三号の項目を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
一 商品又は製品(半製品、副産物、作業くず等を含む。以下同じ。)の期首たな卸高
二 当期商品仕入高又は当期製品製造原価
三 商品又は製品の期末たな卸高
ただし、会社計算規則では、売上原価の表示については、その総額のみの表示をすればよいことになっている。
すなわち、売上高から売上原価を控除して売上総利益を表示し、そこから販売費及び一般管理費を控除して営業利益を表示すればよいことになっている。
会社計算規則
(売上総損益金額)
第八十九条 売上高から売上原価を減じて得た額(以下「売上総損益金額」という。)は、売上総利益金額として表示しなければならない。
期末商品棚卸高の会計・簿記・経理上の取り扱い
会計処理方法
使用する勘定科目・記帳の仕方等
期末(決算時)等
実地棚卸(商品)
決算時には、実地棚卸によって決定された期末時点の在庫(つまり、当期に売れ残った在庫)=期末商品棚卸高を商品勘定に振り替えて売上原価から控除する。
具体的には、当期に売れ残った在庫の仕入原価の合計額を期末商品棚卸高(または期末棚卸高)勘定の貸方に記帳して(つまり、期末商品棚卸高を減少させて)これを売上原価から控除するとともに、商品勘定の借方に記帳して資産計上する。
つまり、当期の費用とはすべきではない期末商品棚卸高(費用)をいったん商品(資産)として計上するわけである。
翌期首
振替処理
期末時点の在庫は翌期以降に販売するため、翌期首には、いったん商品(資産)として計上した期末商品棚卸高を再び期首商品棚卸高勘定(費用)に振り替える。
具体的には、期末商品棚卸高を商品勘定の貸方に記帳してこれを減少させるとともに、期首商品棚卸高勘定の借方に記帳してこれを増加させる。
管理
棚卸(在庫管理)
棚卸は毎月行うことが理想であるが、期末だけ行うこともできる。
なお、在庫が増えると資金繰りが悪くなるので、在庫管理はしっかりと行う必要がある。
取引の具体例と仕訳の仕方
期末(決算時)

決算にあたり実地棚卸によって決定された商品の在庫100万円を計上した。

| 商品 | 100万 | 期末商品棚卸高(期末棚卸高) | 100万 |
翌期首

翌期首に、前期の期末在庫の振替処理をした。

| 期首商品棚卸高(期首棚卸高) | 100万 | 商品 | 100万 |
期末商品棚卸高の税務・税法・税制上の取り扱い
消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分
不課税取引(課税対象外)
消費税法上、期末商品棚卸高は原則として不課税取引として消費税の課税対象外である。
ただし、課税事業者が免税事業者となった場合、期末商品棚卸高は仕入税額控除の対象とはならない(消費税法36条5項)。
逆に、免税事業者が新たに課税事業者となった場合、課税事業者となる日の前日において所有する商品のうちに、納税義務が免除されていた期間において仕入れた商品がある場合は、その商品に係る消費税額を課税事業者になった課税期間の仕入れに係る消費税額の計算の基礎となる課税仕入れ等の税額とみなして仕入税額控除の対象とされる。
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