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資産除去債務

資産除去債務とは

資産除去債務の定義・意味など

資産除去債務(しさんじょきょさいむ)とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約により要求される義務であって、将来当該資産を除去する際に履行が求められる債務を処理するための負債勘定をいう。

資産除去債務に関する会計基準
用語の定義
3. 本会計基準における用語の定義は、次のとおりとする。
(1) 「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。

(2) 有形固定資産の「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一時的に除外する場合を除く。)。除去の具体的な態様としては、売却、廃棄、リサイクルその他の方法による処分等が含まれるが、転用や用途変更は含まれない。
また、当該有形固定資産が遊休状態になる場合は除去に該当しない。

資産除去債務の法人・個人の別

法人・個人

資産除去債務の考え方自体は、法人に限定されたものではない。

したがって、個人事業主でも該当する義務があれば計上は可能である。

ただし、所得税では企業会計基準の適用が強制されておらず、また、会計処理のための現在価値計算などが煩雑であるため、個人事業主では実際に債務が発生した時に費用処理されるケースが多いものと思われる。

個人事業主でも法人に近い会計処理をしていて、金額的重要性も高い場合には本勘定科目が使用される。

資産除去債務の具体例

資産除去債務の具体例としては、次のようなものがある。

  • 建物解体義務
  • 原状回復義務
  • 設備撤去義務

原状回復義務

原状回復義務としては、たとえば、賃貸物件に関するものや土壌汚染等にかかる将来の原状回復費用を事前に現在価値で負債計上するために本勘定科目を使用する。

資産除去債務に関する制度会計と会計基準

資産除去債務については、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」が、その用語の定義、会計処理、開示(決算書への表示)に関して規定している。

また、企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」が、本会計基準を適用する際の指針を定めている。

したがって、本勘定科目は上場企業・中堅企業では広く使用されている。

資産除去債務の経緯・沿革・歴史など

2002年に、アメリカでは、固定資産の除去に関する将来の負担を財務諸表に反映させることが投資情報として役立つとのことから、資産除去債務の開示が義務化された。

また、国際会計基準審議会も、同様の将来費用の開示を求めているという国際的な流れもある。

そこで、日本でも、2008年(平成20年)3月31日に、国際会計基準審議会によって設定される会計基準である国際財務報告基準(IFRS)に対応することを目的に、企業会計基準委員会から企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」と企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」が公表された。

同会計基準は、原則として2010年(平成22年)4月1日以後開始される事業年度から適用されている。

ただし、同基準は大企業向けの会計基準であり、現段階では中小企業には義務付けされていない。

資産除去債務の決算等における位置づけ等

区分表示

原則

資産除去債務は、将来の有形固定資産の除去に係る義務を現在価値で見積り計上する負債であり、貸借対照表においては負債の部に表示される。

通常、その履行は長期にわたるため、固定負債に区分して表示される。

貸借対照表>負債>固定負債>資産除去債務

貸借対照表日後1年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合

資産除去債務は通常、固定負債に区分されるが、貸借対照表日後1年以内に履行が見込まれる部分については流動負債に振り替えて表示する。

貸借対照表>負債>流動負債>資産除去債務

資産除去債務の会計・簿記上の取り扱い

会計処理

使用する勘定科目・仕訳の仕方

有形固定資産の取得等に伴い将来発生する除去費用について、その発生時点で合理的に見積もられる金額を、将来の金額のままではなく現在の価値に換算した金額で資産除去債務勘定の貸方に計上するとともに、対応する金額を有形固定資産の借方に計上する。

その後、当該加算額は、有形固定資産の耐用年数にわたって減価償却費として各期に配分される。

一方、資産除去債務は時間の経過に伴い増加する(利息相当額)ため、その増加額は通常は各期の費用として処理される。具体的には営業外費用勘定を用いて費用計上する。

取引の具体例と仕訳
①当初計上時

取引

有形固定資産の取得等に伴い、将来その資産を除去する義務が生じたので負債として計上する。

仕訳

借方科目
金額
貸方科目
金額
有形固定資産 ✕✕✕✕ 資産除去債務 ✕✕✕✕

②減価償却

取引

有形固定資産の使用に伴い、その価値(資産除去債務に対応する加算額を含む)が減少する分を費用として計上する

仕訳

借方科目
金額
貸方科目
金額
減価償却費 ✕✕✕✕ 減価償却累計額 ✕✕✕✕

③ 時の経過による資産除去債務の増加(利息相当額)

取引

時間の経過により、将来履行すべき資産除去債務の金額が増加したことに伴い、その増加分を費用として認識する。

仕訳

借方科目
金額
貸方科目
金額
営業外費用 ✕✕✕✕ 資産除去債務 ✕✕✕✕

資産除去債務の税法上の取り扱い

必要経費算入・損金算入の可否

資産除去債務については、会計上は当初計上時に負債として認識されるが、その計上額自体は税務上、直ちに必要経費又は損金に算入されるものではない。

まず、当初計上時に有形固定資産の取得価額に加算された金額については、当該資産の減価償却を通じて、各期の減価償却費として必要経費または損金に算入される。

また、資産除去債務の時間の経過に伴う増加額(利息相当額)については、その発生した各期において、必要経費または損金に算入される。

消費税の課税・非課税・免税・不課税(対象外)の区分

不課税取引(課税対象外)

資産除去債務の計上は、将来発生する除去費用を見積もって負債として認識する会計処理であり、実際の資産の譲渡や役務の提供を伴うものではない。

したがって、資産除去債務の計上自体は消費税の課税対象とはならず、不課税取引に該当する。

また、時間の経過に伴う資産除去債務の増加額(利息相当額)についても、対価性のある取引ではないため、同様に不課税取引となる。

なお、実際に資産の除去(解体・撤去等)を行い、その費用を支払う場合には、その取引の内容に応じて消費税の課税関係が判断されるが、通常は課税仕入れとして処理される。

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